業界のMONSTERに訊く vol.4 プロボクサー 藤本 京太郎さん(元K-1ヘビー級世界チャンピオン)「個性を出すには覚悟が必要」

日本人で唯一ヘビー級で活躍しているプロボクサー選手がいる。名前は「藤本 京太郎」。K-1時代、奇抜なヘアースタイルで活躍していた京太郎選手をご存知の方も多いだろう。そんな京太郎選手のボクシング練習を取材し、話を聞くことができた。b-monsterで初めてボクシングに触れた方も、元々格闘技が好きだった方も、京太郎選手の話は参考になることが多いはずだ。
練習は毎日。朝ウェイトトレーニング、夕方ジム、夜ランニング

大塚駅徒歩1分のところにある名門「角海老宝石ボクシングジム」。これまで多くの世界チャンピオン、日本チャンピオンを輩出してきた角海老ジムに、京太郎選手は所属している。
2016年年末の試合で世界チャンピオンになった小國 以載(おぐに ゆきのり)選手も角海老所属の選手だ(下写真)

練習は基本毎日行っている。朝はウェイトトレーニング、夕方から角海老ジムでボクシングのトレーニング、夜は会食など無ければ走ったりしている。試合は年に3回程度、試合前は減量もするし、1ヶ月前からは本格的に追い込む時期になる。
日本人初の東洋太平洋ヘビー級チャンピオン

ー日本人初の東洋太平洋ヘビー級チャンピオンに
2017年1月14日、後楽園ホールで行われた「第557回ダイナミックグローブ」でOPBF東洋太平洋ヘビー級2位のウイリー・ナッシオ(オーストラリア)とOPBF東洋太平洋ヘビー級王座決定戦を行い、12回3-0の判定勝ちで日本人初のヘビー級での東洋太平洋チャンピオンになった。
歴代の東洋太平洋ヘビー級チャンピオンは体格が大きいオーストラリアやニュージーランドの選手達で占められていた。そんな中、日本人、そしてアジア人として初の東洋太平洋ヘビー級チャンピオンに輝いた京太郎選手。日本人でなぜそれほど強いだろうか。
親の離婚で母と祖母に育てられた少年時代。空手と出会い、高校時代にプロになることを決意

大阪で生まれて3歳で空手を始めました。姉2人にいじめられていたからです(笑)両親が小学校5年生の時に離婚して、それから母、姉2人、祖母と暮らしていました。親父がいない家庭の中で、祖母にはとてもよくしてもらいました。
母や祖母は、昔から僕の個性を大切にしてくれる人で深い愛を感じる恵まれた環境でした。だから今まで親に反抗したりそういう記憶はありません。今個性的でいられるのは環境が育ててくれているのかもしれません。
空手は高校まで続けていました。高校生の時にK-1ができ、それを見てプロの格闘家になることを決めました。
19歳で1人東京に。チームドラゴンでキックボクシングに打ち込む
東京に来て1年間ボクシングをやり、その後小比類巻さんらのいる「チームドラゴン」でキックボクシングに打ち込みました。そこでK-1の下にあたる大会で勝ち進んで、K-1にも出場できるようになりました。
2009年K-1世界ヘビー級王座に。K-1時代印象に残っているのはピーター・アーツ選手との試合
K-1では、レ・バンナ、カラエフ、アーツなど、凄い選手たちと戦うことができました。リングに上がるのが恐怖な位に強い選手たち。今思うと当時の恐怖や苦労があるから、今はちょっとやそっとのことでは動じなくなった気がします。
ボクシングの試合も含めて、今までで一番印象に残っているのはアーツ選手との試合。圧倒的不利が予想される中での試合だったけど、育ててくれた祖母が試合1週間前に亡くなってしまったので何としても勝ちたかった。結果は2R KO勝利。祖母の死もあり、勝った瞬間は気持ちが溢れて真っ白になった。祖母が力をくれたのだと思う。
個性を出すには覚悟が必要

髪も赤ですが、スーツやジャケットも赤しか持っていません。靴も2足色違いのを履いています。昔から有名になりたいというのがあったのもありますが、自分の覚悟を表明するためのスタイルです。

楽しく生きていきたいし、もっと強くなりたい。チャンピオンで無ければ個性は台無し。何もない人が個性だけ出してもただの変わり者でダサいですから。結果を出しているからこそ個性が成り立つ。だから個性を出すことは覚悟だと思っています。
日本ではなかなか相手が見つからない。常に自分との戦いになる

日本にはヘビー級ボクサーが少なく練習相手もいない。プロボクサーの中で、僕ほどスパーリングが少ない選手はいないと思います。対戦相手もなかなか決まらないことが多いです。
ヘビー級はアジア人自体が少ないし、「速くて強い」そんな身体能力を持った選手が少ない。アメリカなど海外には凄い選手がたくさんいる。もっと強くなって、世界を目指したいという気持ちがある。現在世界ランクはWBCが15位、WBOが13位だけど、なんとか日本人初のヘビー級での世界挑戦にいければと思っています。
「やっぱり格闘技はヘビー級」と言われるような試合を

ーボクシングフィットネススタジオ「b-monster」の会員さんへメッセージ
ボクシングを少しでも興味持っていただいたら、後楽園ホールなどの試合にも見に来てくれると嬉しいです。b-monsterでボクシングを体験する人が増えることは、ボクシング業界としても嬉しいこと。応援する人たちあってこその僕たちプロボクサーですので。
見に来ていただいた人にはヘビー級ならでは迫力ある試合を見せられればと思っています。世界では格闘技といえばヘビー級が一番人気ありますし、一度ヘビー級を見たら他は見られない位になってもらえるように頑張ります。

編集後記 ー 「#自分と向き合え」
今を生きる
日本のプロボクサーはチャンピオンを除き、38歳という年齢で引退を迫られるらしい。一般の職業に比べて怪我するリスクが多いし寿命も短い。結果が出なければ引退を迫られる厳しい世界でもある。だからこそ京太郎選手は今をきちんと生きているのだと感じた。
人間はいずれ死ぬ。誰しも寿命があり、限られた時間の中で自分の人生を生きる。プロボクサーは殴り殴られるスポーツだからこそ死を意識することも多いし、年齢制限がある中で勝負しているから、より生きていることのリアリティがあるのかもしれない。
未来
2017.5.8 東洋太平洋ヘビー級タイトルマッチ 初防衛戦が後楽園ホールで行われる。京太郎選手がさらなる未来を切り開くための1戦にもなる。

自分と向き合って未来を切り開く京太郎選手は、まさにb-monster.fitのテーマ「#自分と向き合え」を体現されている方。b-monsterのお客様も是非、後楽園ホールに応援へ行って欲しい。生のヘビー級ボクシングの試合は迫力があるし、b-monsterレッスンの意識も変わるはず。「b-monster.fit見ました」と言えば、京太郎さんなら気さくに写真やサインに応じてくれるだろう。
今回の取材でもっとも心に残ったのは「個性を出すには覚悟が必要」という言葉。今を生きて未来を切り開く人は、勝ち負けを超えて生き方自体を応援したくなる。
